ごあいさつ

 本年度まで、床矯正研究会を約20年にわたり主幹として頑張ってきました。しかし、床矯正研究会はあくまでも個人的なサークルです。

 今後の床矯正の発展と皆様の将来を考え、一般社団法人日本床矯正研究会を設立し、社会的に確立されたた学会となりました。やがて公益社団法人となれれば、日本の歯科会での地位も強固に確立されるものと思われます。個人から発生した床矯正研究会の未来がさらに広がる可能性があります。

 鈴木が地元で開業して40年が経過します。当然患者さんからの矯正の依頼が多々ありました。矯正治療を矯正専門医に依頼すると、多くの症例は小臼歯抜歯が必要となります。その当時、この程度の叢生で抜歯が必要なのかとの疑問を持ちました。多くの開業医も同じ考えをお持ちだと思います。しかし、鈴木の専門は保存修復学です。保存の立場から、健康な歯の抜去は気が引けました。また、鈴木は大学の非常勤講師として実習を半日受け持っていました。歯科医院は1日休診にしていますから、時間があります。その時間を使い、図書館でいろいろな欧州の矯正治療法を学び、30年ほど前に自分なりの矯正治療として床矯正を勉強しました。自分の診療室で技工士と試行錯誤で床矯正装置を考え、患者さんにその床矯正装置で治療を行い、床矯正治療が確立した矯正方法と確信しました。

床矯正研究会を設立の経緯

 20年前にGCからGCサークルの執筆依頼があり、床矯正の治療法を2回にわたり出筆しました。その後、GCから床矯正の講演依頼があり、全国各地で100回ほど講演をしました。その際、講演を受講した先生からの要望もあり、20年前に床矯正研究会のサークルを設立しました。あくまで個人的サークルと考えていましたが、一般書籍では「抜かない歯医者さんの矯正の話」を出版した結果か、「床矯正」という矯正治療が広く社会に広がりました。

生理学、機能の重要性

 初期の不正咬合は、深い知識がなくても早期に治療を開始することで対応可能です。不正咬合は混合歯列期以前の症例であれば比較的簡単に床矯正を用いた治療で対応できます。これは、正しい機能があれば正しい形態を維持することを意味します。不正咬合を放置することで状態は刻々と悪化するため、早期の対応が重要となります。患者様は歯(歯冠)を見ていますが、歯冠は歯根と一体であり、歯根は歯根膜に丁植されています。矯正は歯冠を正すだけで無く、歯根膜に正しい機能を与え、咀嚼をコントロールすることが一番大切と考えています。また、ノーベル賞の中にノーベル医学賞は有りません。ノーベル生理学・医学賞は存在します。つまり、人を治療する学問は生理学が基本となります。東京医科歯科大学の故三浦不二夫名誉教授は矯正治療には「咬合の育成」と「不正咬合治療」の2つの側面があるとおしゃっています。この生理学を基本とする治療の考え方は床矯正研究会が求めているものと同じです。

「なぜ?」を考える

 歯科医は病気・疾患を治療することよりも、なぜ、不正咬合が発症したかを考えるべきです。発症原因とその時期が解明されれば、年齢に応じた対処法が明確になります。咀嚼は歯槽骨を育成し、表情筋を活性化させ、顔貌を変えます。不正咬合の治療対象は歯列だけではありません。保護者に顔貌の改善も可能であることを伝えるべきです。

 床矯正治療で良い結果が得られない症例があります。15年前に口輪筋と舌の不調和がある症例を花田先生と話し、原因として「舌があばれている」という結論に達しました。そこで、舌や口輪筋に関するいろいろな医療器具を考案し、特許申請をしてきました。これらの医療器具が不正咬合の主因である口腔機能発達不全症を改善し、不正咬合の治療のみならず、顔貌の改善に一助するものと考えます。

これから

 来年度は、保護者が早期に口腔機能をコントロールすれば不正咬合は改善できるという内容の本を出版する予定です。この本を一般社団法人日本床矯正研究会の会費から捻出しようと考えています。床矯正は不正咬合治療にとって有効な治療法と考えますが、診断と治療開始時期の判断を間違えると大変苦労します。この課題は今後、一般社団法人日本床矯正研究会が明確にしていくとおもいます。