COVID-19感染者が増え、重傷者が増え、死者が増える。ワクチンの副反応が自分にどんな悪影響が出るのか?ニュースやネットからさまざまな情報が入ることで新型コロナウイルスを恐れ、魔女狩りが起き、判断に悩む人が多い。この恐れという感情からくる判断について、まさにコロナ禍予言をしていたかと言われている約40年前に発表された論文を紹介したい。
行動経済学の第一期を形成し、ノーベル経済学賞受賞を受賞したダニエル・カーネマンとエイモス・トヴァスキーが、1981年に共同執筆した「アジア病問題(Asian Disease)」を架空に想定した研究です。この論文は約40年前の研究であり、現在では経済学にも使われる「フレーミング効果」として知られています。
「アジア病問題(Asian Disease)」:アジアで発生した病気を前提に、アメリカで予測される予防策について、大学生に質問紙調査を行い、回答結果の合理性を判断する。
質問1:アメリカ合衆国は、600人を死亡させる脅威の「アジア病」の発生に備えようとしている。その病気と戦うためにふたつの選択的な対策が提案されている。対策の結果の科学的な推定は以下のとおり。
対策Aがとられると、200人が助かる
対策Bがとられると、600人が助かる確率が1/3、誰も助からない確率が2/3である
あなたはどちらの対策が好ましいか?
どうでしょう?この問いに対して論文での回答は以下となります。
A 72%
B 28%
回答はAに偏っていますが、皆さんはどうでしたか?
さらに、別の回答者グループに、次のような質問をしました。
対策Cがとられると、400人が亡くなる
対策Dがとられると、誰もが助かる確率が1/3、600人が亡くなる確率が2/3である
あなたはどちらの対策が好ましいか
この結果は、
C 22%
D 78%
今度は回答にDを選択した人が多かったようです。皆さんはどうでしたか?
この問いは「得する(生きる)」ことと、「損する(亡くなる)」ことに対する選択の誘導となります。助かるという「利得」の選択に関してはリスク回避的であり、亡くなるという「損失」の選択に関してはリスク愛好的である、ということである。このふたつの質問は、質問の仕方が異なる(損するか得するか)だけで、機会と損失は同じである。AとCは同じで、BとDも同じであにも関わらず、前者の質問ではAが、後者ではDが多数派となりました。これはなぜでしょう?この回答の矛盾は、質問という「情報の提示の枠組み(framing)」の違いで選択を誘導しているためです。誰しもが生きたい、誰しもが亡くなりたくないという心理をついた質問によって、回答を誘導することができるということです。これはファイナンスにも応用できますが、患者さんと会話をスムーズに進めるときにも応用できます。頭ごなしに患者さんに「この歯は抜かなきゃいけない!」と言うことは、対策Cと同じですのでご注意を。
~TAKAの独り言~
このように、結果が同じでも質問の仕方によって人間の行動原理が変化します。負の行動原理を利用したマスコミの報道やネットの情報で(これは視聴率やお金のためと思われる)、心的外傷の方がとても増えています。以前紹介した論文のグラフから、プラセボ(ワクチンではなく生理食塩水)のグループで特に若年者(55歳以下)では特に倦怠感、頭痛が多く見られました。この比率は今までのプラセボ研究の中でもかなり大きく、心的外傷が寄与しているものと考察できます。
このフレーミング効果、行動経済学が気に入った人は、プロスペクト理論を知ることで行動原理の理解を深めることができます。宝くじを買う心理等、少しファイナンス寄りの考え方ですが、面白いですよ。