「親と顔が似ているな」、「さすが音楽の才能は親譲り」、「お前の父親はワルだけど、お前もワルだな」、などの会話をしたことはありませんか?親からの遺伝に対し、このような主観的な印象を持っていましたが、実際は様々なことが子供に遺伝します。慶応大学文学部教授の安藤教授が、自身の調査結果や欧米などの研究結果をまとめ分析しました。身体的特徴は90%以上、知能・学業・成績は50%以上、反社会行動等の問題行動は約50%遺伝します(図01)。犯罪者からも犯罪者が出てきやすいようです。加えて収入も59%遺伝するとのことです(図02)。親の良い能力だけを子供に遺伝して欲しいものですが、環境因子もとても重要です。

また最近では、新型コロナワクチンの副反応はアレルギー体質の若い女性に多い(以前取り上げた論文を参照)ことから、親のアレルギー体質が子供に引き継がれることが注目されました。海外の論文を見ると、喘息のあるお母さんから生まれたお子さんは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎を3倍程度発症しやすいことや、両親のうちの1人にアレルギー疾患があると、子どもがアトピー性皮膚炎を発症する確率が37.9%、両親ともアレルギー疾患があると50.0%の子供が発症する確率があります。このように、アレルギーに関してはなるべく子供に遺伝してほしくないですね。

歯科においてはハプスブルグ家の下顎前突が有名です。「下顎前突症」のWikipediaでは、ハプスブルグ家が引用されています。もしバロック期の絵画が好きでしたら、ディエゴ・ベラスケスはハプスブルグ家の宮廷画家でした。特に「ラス・メニーナス」(図03)はハプスブルグ家、フェリペ4世の王女マルガリータと侍女を描いたのが有名です。神聖ローマ帝国の皇帝の座を代々受け継いでいたハプスブルグ家、自分たちの血統を「高貴な青い血」として近親相姦を繰り返し、顎や鼻が特徴的な家系です。特にカール5世の下顎前突は有名で、幼少期では病気で鼻が詰まり開口癖があり、また顎の力が弱く、食べ物は丸呑みだったそうです(図04)。加えて近親相姦なため、一族は下顎前突だらけとなりました(図05)。下顎前突が遺伝することで有名な話ですが、実は子供の頃はそこまで前突していません。確かに遺伝による要素もありますが、骨格性に移行する前の機能的下顎前突を治療することが重要かと思われます。

実はアングルIII級はヨーロッパよりも東南アジアが他の地域より多くみられます。中国やマレーシアが15%以上、日本では2.3-14%に対してインドやヨーロッパは1-5%とかなりの差があります(図06, 07)。Zereらによると、アングルIII級は遺伝要素があるものの、環境的要因(成長刺激、姿勢、舌の習慣、鼻気道閉塞、口呼吸等)、アデノイドや巨大舌、先天的解剖学的欠如(口蓋裂等)、筋肉機能障害、ホルモン障害が複合的に組み合わさることにより起こりうる。アングルIII級治療のための骨切り等、侵襲の大きな治療を避けるためには、成長期の子供に対する早期治療が有用であるものの、その診断は非常に困難となる。

図06
図07

子供に遺伝するものは色々とあります。身体的特徴、収入、アレルギー、そして下顎前突、幸せも遺伝しますが(この論文は機会ありましたら)。この中でアレルギー以外は環境因子への対応で改善できます。特に機能性反対咬合への対応は歯科医師として必須です。

(TAKAの独り言)

こう色々と親から子に遺伝しますが、「ハゲ」だけは遺伝してほしくない、、、