私が床矯正治療を始めたのは約20年前、その後渡米し、近年日本に戻り床矯正治療を再度行っている。子供の口腔内を拝見し床矯正治療を行った際に、20年前とは何か異なることを感じた。特に発育空隙の欠落と、ガムを噛む子供がほとんどいないことだ。大抵のアメリカの子供には発育空隙もあり、そして殆どみんながガムもよく噛んでいる。発育空隙の欠損とガムを噛むことに相関はないと思われるものの、ガムを噛むことは口腔周囲筋や舌の発育、唾液腺の成熟、咬合等に有効であると考えられる。

そこで今回は日本の研究論文から硬性ガムトレーニングが与える影響について考えてみる。

成長期の児童に一定期間のガム咀嚼トレーニングを行うことによって,咬合力および口唇閉鎖力の向上,ならびに咀嚼パターンに変化を生じることが報告されている。そこで小学生44人(男児23名、女児21名、平均年齢11.2+0.29歳)に対し、咀嚼トレーニングとして1日2回朝夕食後の10分間、硬性ガムの指導を3ヶ月間行った。咀嚼の偏りがないよう、「右側で10回噛んだ後,左側で10回噛む」、「口唇を閉じて噛む」などを咀嚼トレーニング開始前に指導した。咀嚼トレーニング開始前(T1)と経過観察終了時(T2)に印象採得および顎機能検査を行い、計測を行った(図01, 02)。

その結果,T1 とT2 の比較では,咀嚼経路幅が有意に増加し、グラインディングタイプ咀嚼への変化がみられ、上下顎第一大臼歯近心頬側咬頭間幅径,下顎第一大臼歯頬舌的歯軸傾斜角ならびに上顎第一大臼歯口蓋幅径が有意に変化した(図03, 04)。

図03
図04

~TAKAの独り言~

硬性ガムで噛み締めることで、噛み方がチョッピング咀嚼からグラインディング咀嚼へと変化し、加えて歯がより垂直に植立することで歯列弓の幅が広がる。この研究では、3ヶ月のトレーニングで優位に噛み方の変化と歯列弓の増大が確認できた。以前、メルマガで紹介した小野先生の論文でも言及されていた「成長期におけるいわゆる“食育”の意義を啓発する」より、食育の重要性が再確認された。子供への食事は、柔らかいものよりも噛み締めることができる食材、そして咬断運動を考え大きめの食材が望ましいと考えられる。